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2017年3月19日日曜日

『セレナーデ』の構成[志村正彦LN153]

 アルバム『シングルB面集 2004-2009』の12曲目に収録されている『セレナーデ』について以前一度書いたことがある。この作品は2007年11月7日リリースの10thシングル『若者のすべて』のB面曲、カップリング曲として発表された。今年で誕生して十年になる。

 志村正彦・フジファブリックの曲としてあまり知名度が高くないが、志村作品のベスト5を選ぶとするなら僕としては必ず入れたい曲である。欧米でも日本でも「セレナーデ」というテーマの歌は数多いが、その中でも時を超えて残り続ける作品だと思う。

 『セレナーデ』の歌詞をすべて引用したい。二行八連の構成であり、その二行ごとに連番を付す。楽曲の構成からすると、a-b-cの三つの旋律があるのでそれも加えることにする。


1a 眠くなんかないのに 今日という日がまた
  終わろうとしている さようなら

2a よそいきの服着て それもいつか捨てるよ
  いたずらになんだか 過ぎてゆく

3b 木の葉揺らす風 その音を聞いてる
  眠りの森へと 迷い込むまで

4c 耳を澄ましてみれば 流れ出すセレナーデ
  僕もそれに答えて 口笛を吹くよ

5a 明日は君にとって 幸せでありますように
  そしてそれを僕に 分けてくれ

6b 鈴みたいに鳴いてる その歌を聞いてる
  眠りの森へと 迷い込みそう

7c 耳を澄ましてみれば 流れ出すセレナーデ
  僕もそれに答えて 口笛吹く

8c そろそろ 行かなきゃな お別れのセレナーデ
  消えても 元通りになるだけなんだよ


 1a-2a-3b-4c-5a-6b-7c-8cという展開は、歌詞と楽曲からすると 1a-[2a-3b-4c]-[5a-6b-7c]-8cという構成になる。[a-b-c]の枠組を持つ[2a-3b-4c]と[5a-6b-7c]という二つのブロックを、1aと8cという大きな枠組が包み込んでいる。そう考えると、 1a-《[2a-3b-4c]-[5a-6b-7c]》-8cという構成を仮定できる。非常に繊細で微妙な意味を持つ歌詞であるので、そのような仮定のもとに歌詞の分析を試みたい。

 二つの[a-b-c]のブロック。[2a-3b-4c]と[5a-6b-7c]の歌詞は繰り返す部分と微妙に変化する部分を持つ。その差異と反復が『セレナーデ』の時間の推移を表している。そして物語の舞台を形作っている。1aの「今日という日がまた 終わろうとしている」は真夜中の時を、8cの「そろそろ 行かなきゃな」は夜が明ける時をそれぞれ指し示す。
 真夜中から夜明けへという時の流れの中で、『セレナーデ』の独特な夜の世界が現れる。

 (この項続く)

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