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2015年10月12日月曜日

「最強の敗者」ラグビーWC日本代表

 今朝、ラグビー・ワールドカップ、日本対アメリカ戦の放送を見た。印象深い光景があったので、今回はそのことを記したい。

 日本代表は3勝1敗という素晴らしい成果を残したが、決勝トーナメントには進めなかった。南アだけでなく、サモア、アメリカに対してもすべて紙一重の差で勝利した。ラグビーは実力差がそのまま結果に出るスポーツではあるが、重要な局面での攻防、一瞬の判断が勝敗の流れの分かれ目になることもよくあるからだ。勝利への糸をたぐり寄せた意志と身体の力はたぐいまれなものだった。

 もともと、早稲田のラグビーのファンだった。一番の思い出は2001年12月の早明戦。いつもはテレビ観戦だが、あの年は運良くチケットを入手でき、妻と亡き父と三人で国立競技場へ向かった。山梨の日川高校出身の武川正敏がロスタイムに逆転ゴールを決め、14年ぶりの全勝優勝を果たして、伝説の試合となった。父が笑顔で臙脂色のフラッグを振っている姿を思い出す。代表の中でも、早大出身の選手、五郎丸歩や畠山健介をどうしても贔屓してしまう。

 今日の五郎丸のインタビュー。二度目のマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)を受けてのものだった。「このマン・オブ・ザ・マッチはほんとうにチームの…」と言いかけた後、言葉が出てこない。涙ぐむ。見ているこちら側もぐっとくる。どういう気持ちですか今、と問われ、「われわれの目標は…」と再び言葉をふりしぼろうとする。小声で中継ではほとんど聞き取れなかったが、準々決勝(あるいは準決勝)へ出ることでした、と言っているように聞こえた。
 五郎丸の男泣きは、チームのみんなへの想いとともに、決勝Tに進出できなかった無念さからのものだ。しかし、後ろ向きではなく、前向きの涙なのだろう。ラグビーの未来に向けての、近くでは2019年のラグビーWC日本大会を見据えての。

 インタビューは切り上げられ、「canterbury」のジャージを着た可愛らしい少年が登場。五郎丸の方を少し見上げ、MOMの記念カップをわたす。五郎丸も少しにこやかになり、二人でカメラの方に向いてツーショット。晴れやかな舞台でうれしそうに微笑む少年と、まだ涙をこらえながらほんの少しはにかむようにしている大男。
 「小さな男の子」と「大きな男の子」のような二人が並ぶ瞬間の光景、偶景が心に残った。

 報道によると、予選3勝して決勝Tに進出できなかったのは史上初で、それゆえ、日本代表チームは「最強の敗者」と呼ばれているそうだ。
 「最強の敗者」、ラグビーらしい含蓄のある、強くてたくましい言葉だ。彼らの軌跡とこの言葉にとても勇気づけられる。

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